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ストレートネックの解剖学的観点からの分析

影山睦美

ストレートネックの解剖学的観点からの分析

影山睦美

プロフィール:影山睦美 氏

総合病院の救命救急センター勤務を経て、現在は回復期リハビリテーション病棟勤務。
その中でも急性期、回復期それぞれのステージで
さまざまな頸部の症状を訴える多くの患者さんと関わってきた経験がある。

スマホ首のレントゲン

What is Straight Neck?

ストレートネックに関する詳細な情報と実際の症例画像は、横濱もえぎ野クリニックのウェブサイトでご覧いただけます【参照: 横濱もえぎ野クリニック 脳神経外科・脳神経内科-ストレートネックとは? 実際の症例画像をお見せします】」

ストレートネックとは

肩が下がる姿勢

ストレートネックとは、レントゲン上、脊柱から頸椎の配列が直線状になる事(頚椎の生理的前彎の消失)を示します。

臨床ではスマホ首という俗称もストレートネックの一種とされています。

しかし、スマホ首は多くの場合、レントゲン上での所見で下部頸椎の前弯がきつく、1~5番が直線状になっています。つまりストレートネックと表現されていますが、根本は異なるものであると言えます。以上の点を踏まえ、今回はあえて「スマホ首」と表現して説明を進めていきます。

右のイラストは、スマホ首と巻肩の姿勢に多い肩が下がる姿勢を表現しています。

スマホをのぞき込むうつむき姿勢によって頸部は前傾し、バランスをとるために顎は突き出した姿勢となります。また、スマホ操作等のために、腕が前方に出ることで、右の肩関節は内旋位となることがあります。

長時間内旋位となることで、右の大胸筋が短縮し、右方向に引っ張られ、頸部~頭部のバランスが崩れてしまうため、頸部は左へ傾くことがあります。

頸部が左に傾くと、左の僧帽筋上部繊維が短縮し、緊張したままとなるため、左肩が上がったように見えることがあります。

しかし、この状態ではバランスが悪いため、左肩も内旋位にして補正しようとすることがあります。この状態により、外見では肩の左右差がわかりにくくなることもあります。

動画では、肩の高さに左右差のある右の肩関節内旋位とスマホ首の被験者が、ルーネストレッチを使用することで、肩の位置が揃う可能性が示されています。ルーネストレッチには、なぜこのような効果が期待されるのでしょうか。

頸部の症状の改善が期待できる方法のひとつに、セラピストの手技と合わせて行う「牽引」があります。

牽引は、首を10~20°前屈した状態で、8~10分程度断続的に行うことが一般的です。牽引により、頚部の筋肉や筋膜、靭帯の緊張が緩和され、痛みが軽減される可能性があります。

しかし、通院が難しい患者様方は、頻繁にセラピストの手技と牽引療法を行うことが難しい場合もあります。

在宅でも効果を期待できる方法として、頬杖をついてストレッチをすることで、牽引の効果を生かすことが期待できます。

しかし、頬杖の姿勢は腕が前方に出て肩関節内旋位となり、大胸筋が収縮し、僧帽筋が伸展したままとなるため、効果的なストレッチが難しくなります。

そのため、頬杖の代わりとしてストレッチを行うことを前提として作られたルーネの使用が推奨されます。

ルーネエクササイズ

ルーネエクササイズの基本姿勢は、机に対して平行に座り、ルーネに頚部を預け、胸を張った状態で肘をついて姿勢を安定させるというものです。

また、ルーネに頚部を預け軽度前屈した姿勢をとることで、効果的な角度でのストレッチが期待できます。医療機関での牽引においては、頸椎椎体を伸長する方向への牽引ですが、ルーネエクササイズでは、背面方向へのストレッチとなります。

ルーネ側屈エクササイズ

背面方向への牽引は、スマホ首の場合、頸椎が前傾している状態です。これを後傾方向へ矯正する力がなければ、前傾した頸椎はもとに戻りにくいです。ルーネエクササイズは、前傾した頸椎を正しい位置に戻すのに役立つ手法です。頸部の前傾が正しい位置に戻ることで、短縮していた大胸筋、小胸筋が伸展し、僧帽筋上部繊維の過伸展が改善されることが期待できます。

ルーネに頚部を預けたまま、軽く頸部を側屈する動作では、エクササイズによって僧帽筋上部繊維がほぐされることにより、可動域が広がることが期待されます。

また、動画では腕を使って右側に大きく頸部を側屈するストレッチが紹介されています。動画の被験者は右の肩関節内旋位のため、体幹が左回旋となり、ねじれが生じています。そして、右肩が左肩に比べて位置が低くなっています。これは、左肩の僧帽筋上部繊維の収縮と右肩の僧帽筋上部繊維の伸展によってバランスが崩れたために生じています。

これらの原因を解消することで、肩の左右差が改善されることが期待できます。正しい姿勢に戻すときに重要なのが靭帯です。スマホ首という姿勢のくせは筋の短縮、拘縮や靭帯の伸展によってついていきます。動画の例では左回旋方向であるねじれを是正するために、右回旋方向の力をかけています。

つまり、ねじれと逆の方向へ回旋し、正しい姿勢へとクセづけをしています。これは、脊柱モールディングの手法と同じといえます。脊柱を支える靭帯の特性上、10分以下では効果が得られにくいとされています。よって、最低でもエクササイズの時間は15分以上必要です。以上のエクササイズにより、外見上でも明らかとなるレベルで肩の高さの左右差が改善されることが期待できます。

スマートフォンを見ている時、無意識にうつむき姿勢となります。長時間のうつむき姿勢が、スマホ首の原因の1つとされています。うつむき姿勢が長く続くことにより、本来あるはずの頸椎の前弯が失われていく可能性があります。

ルーネの曲面は、頸椎の前弯に沿った形状になっています。滑り止めを敷き、ルーネを頸椎の前弯に沿うように当て、仰向けに寝ることで、本来の頸椎の前弯をサポートしながらストレッチを行うことができます。

ルーネを使用した際、上部頸椎付近にあたる感覚があります。これは前弯部分をただ支持するのではなく、高さを適切にして上部頸椎をサポートするように作られているためです。このため、前弯部分のみを支持した場合によくある、顎突き出し姿勢や首の前傾が起こりにくくなります。

仰向けの姿勢で使用しても、正しい姿勢をサポートするように設計されています。

スマホ操作する男性
前弯エクササイズ

この記事を執筆させていただくにあたり、ルーネを使用させていただきました。

私自身も、スマホ首と巻肩がある状況で、右肩下がりの姿勢です。エクササイズをしたところ、やはり伸展できる範囲が違うことがよくわかりました。

左右差を感じなくなるまで行うと、左右差が改善されたように感じられ、驚きました。

整体院等に行かなくても、このような効果を感じられるのは素晴らしいと思います。

個人差はありますが、多くの方に歪みがあると言われていますので、ぜひ一度、ルーネを試してみてください。

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