第10節 ウルクの遊覧 前編~sightseeing in uruk:新編ギルガメッシュ叙事詩 第1章 ビジリア
第10節 ウルクの遊覧 前編 翌朝、イルドとエンキドゥは、ひときわ立派なロバ車に乗ってウルクに向かって出発した。昨日の夜の別れ際の様子などどちらも気にしていないようだったし、実際イルドはその聡明そうめいさゆえ、エンキドゥ
第10節 ウルクの遊覧 前編 翌朝、イルドとエンキドゥは、ひときわ立派なロバ車に乗ってウルクに向かって出発した。昨日の夜の別れ際の様子などどちらも気にしていないようだったし、実際イルドはその聡明そうめいさゆえ、エンキドゥ
第2章リンカネーション 第1節 Reincarnation 朧おぼろげな 視界しかいの中で、必死に何かを訴えている人影が見えた。声は聞こえない。涙を流した、悲愴な 表情ひょうじょうだけが、 靄もやがかっているのになぜかは
第9節 ウルクへの旅路(Day3) ◆Day3 翌朝、エンキドゥは案の定日が十分高くなった頃に目を覚ました。まだ気分が悪かったが、昨夜何かよくわからないままに迷惑をかけた記憶はあったので、天幕から這い出たところにいたカー
第8節 ウルクへの旅路(Day2) ◆Day2 翌朝、ウトゥーとエンキドゥの一行は、日の出とともに朝食を済ませ、ロバ車に乗ってウルクへ向かった。 「ウルクにはあなたみたいな人がたくさんいるの?」 「そうですね、人はたくさ
ウルクへの旅路(Day1) 契約が成立してからそう時間の経たぬうちに、神殿男娼『ムシャハト』から3人の男娼が選ばれた。「任務は、」 と、リーダーのムシャハトが抱える精鋭の中からさらに選び抜かれた男娼の3人それぞれに、ムシ
第6節 ムシャハトの誘惑 その頃、ウルクの王ギルガメッシュは、執務室で部下であるウタナからとある報告を受けていた。それは森に生きる狩人たちから陳情があった、というものだった。詳しく聞くと、どうやら最近ウルクから離れた森の
第5節 杉森の番人「魔獣フワワ」後編 「ううっ」 と、体のきしむのに呻うめきながら、目が覚めたエンキドゥは気が付くと木陰に横たわっていた。 「よう、気が付いたか?」 「ひっ…!」 すぐ近くに座っていた杉森の番人フワワが話
第4節 杉森の番人「魔獣フワワ」前編 それから、どれくらいの時間が経過しただろうか。 葦のベッドの中で目覚めた少女は、固まった体をほぐすように大きく伸びをした。外は陽が高く昇り日差しが強いため、40度以上の高温になってい
第3節 エンキドゥ誕生 宵闇の草原、見上げれば真昼の蒼天…――。 時間と空間のはざまに広がる、ここは大地の女神アルルの神域である。 誰もいないその世界で、アルルはその両手をゆらりと天に伸ばした。指先に届く陽光
第2節 大地の女神アルルの憂鬱 さて、この「大地の女神アルル」は、人間を創造した女神であり、出産の女神でもある。 ヒトの形をしながらも月夜に伸びる影のようにその上背は高く、水の滴るつららのように細長い指先は鋭利なようで存
第1節 孤高の暴君ギルガメッシュ 紀元前2600年より少し前、チグリス・ユーフラテス川流域に位置した都市国家ウルクは、堅牢な城塞都市として人々の暮らし・文化を育んでいた。川辺の地の利から良質な粘土がとれるため、その外壁は
新編ギルガメッシュ叙事詩 新編ギルガメッシュ叙事詩編 ビジリアの章 プロローグ この物語は、人類創生のはるか昔、「神」の時代に遡る――。 “アヌンナキの神々”、彼らはそう呼ばれた。令和の現代から数十万年前の太古の昔、悠久